2010年 05月 07日
Hさんの発見は、ちょっとスゴい発見。 |
頭の片隅にひっかかっていたナゾや気になることが、突然氷解することがありますが、そんなことがこのところ続けて起きました。
そのひとつが以前旧ブログの「続・アロハ好きのHさん」で紹介したHさんにまつわるエピソード。Hさんは、3年前に湘南からこちらに移住してきた元お坊さんですが、この人の楽しみはオリジナルのアロハの作成。うちの店に来て、気に入った着物のはぎれを何枚かピックアップすると、それを以前住んでいた逗子のシャツ職人さんに送ってアロハに仕立ててもらう。すでにその数7〜8枚に達しているというアロハ好きです。
Hさんがいま住んでいるのは佐久市の山間の小さな集落。古い民家に一人で暮らすHさんは夜になると「寂寥感がものすごくて」、寝るときも灯りはつけっぱなし、テレビも音量はしぼるもののつけっぱなしだといいます。「そうでもしなければ、さみしくて寝られない」というのです。
で、ここからが本題なのですが、Hさん、あるときこう言ったのです。
「一晩中テレビをつけててわかったことがあるんだけど、朝になると、テレビのボリュームって小さくなるのね」
「えーっ、ホントっすか?」
旧ブログによると「『え』に濁点をつけたいくらいわたしはおどろいた」と書いています。そして、「CMになるととたんにボリュームが大きくなるのはだれだって知っている。でも朝、ボリュームが小さくなるなんて初耳だ」と。
「 朝目が覚めて、ふとんのなかで聞いてると、小さくなっているのがよくわかるの」
そしてHさんはたたみかけるようにこう言いました。
「朝、ボリュームが小さくなるのは、みんなが使うからだと思うんだよね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。みんなが使うからって、朝、夕の炊事の時間に水道の出がわるくなるみたいに、テレビのボリュームも朝、みんなが使うから小さくなるっていうんですか?」
「うん、そういうことなんだと思うよ」
みんなが使うから朝はテレビのボリュームが小さくなるなんて、もしホントならちょっと驚く話でしょ?
それがホントかどうかは電力会社か家電メーカーに電話で聞けばすぐに教えてくれるんでしょうけれど、わたくし、この件をずっとそのままにしていました。もしHさんの言うことが本当で、電気も水道のように常に一定の量が供給されるのではないとしたら、それはそれで面白い話ではないかと思ったからです。もちろん、いつかはこの問題に決着をつけなくちゃという気持ちも頭の片隅にありましたけど。
そんなとき、手にした『ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか』(後藤雅洋著・河出書房新社)で偶然こんな記述を見つけました。「オーディオの極意」という小見出しに続く一文で、ちょっと長くなるけど引用しますね。
「オーディオ趣味は魔物だ。ジャズも魔物的なところがあるけれど、オーディオはより業が深い。門外漢からみればまるでオカルトかもしれないが、ホンのちょっとしたことで音がかわってしまうから始末が悪い。コンセントの挿し方を左右入れかえると音が変わるし、深夜になると音が変わる。もちろん根拠はあって、家庭用電源は片側だけに電流がきており、もう一方はアースなのだ。挿し込み方を変えればオーディオ機器内部のアース位置が変わり、音も変わる。夜間オフィスが閉まればコンピューター使用も少なくなり、電線を通じてアンプに侵入してくるデジタル・ノイズが減るので音が良くなる」
ボリュームが大きくなったり小さくなるとは書いてないですけど、電気は常に一定ではないということが書いてあります。Hさんの言うことは、本当だったんですよ! このあとは電気の話ではないのですが、興味深い話なので続けて引用します。
「(中略)こんな塩梅だから、ジャズ喫茶はどこの店にも“秘密”のオーディオ・テクニックというのがある。門前仲町の名店『タカノ』は、店内脇の階段に雑誌が雑然と積み上げられていた。オーディオでも大先輩に当たる亡くなった『ファンキー』の野口伊織さんによると、この雑誌の積み上げ方で音を調節しているのだという。そんなバカな、と当時は思ったが、いまは違う。わが店のスピーカーが埋め込んである壁の内側は空洞で、そこにCDや古い伝票の束などが収納してあるのだが、あるときそれを整理したら、途端に低音の出方がまったく変わってしまったのだ」
いやあ、音ってデリケートなんスね。雑誌の積み上げ方で音が違うと書いてありますが、雑誌によっても音が違ったりなんかして。「週刊文春」より「週刊新潮」のほうが音が皮肉っぽいとかって(皮肉な音ってどんな音だ?)
そんなわけでHさんの発見は一般人はなかなか気がつかないスゴい発見だったというお話でした。
ここ数日でカラマツが一気に芽吹き、山の色が変わってきました。奥の三角の山はおなじみ茂来山(1718m)。
テニスボールが大好きな近所の犬ジョン。
なだらかな山がふたつの重なっていますが、左から三ツ岳(2360m)と大岳(2382m)。二つの山に見守られながら太陽がゆっくりと沈んでいきます。
そのひとつが以前旧ブログの「続・アロハ好きのHさん」で紹介したHさんにまつわるエピソード。Hさんは、3年前に湘南からこちらに移住してきた元お坊さんですが、この人の楽しみはオリジナルのアロハの作成。うちの店に来て、気に入った着物のはぎれを何枚かピックアップすると、それを以前住んでいた逗子のシャツ職人さんに送ってアロハに仕立ててもらう。すでにその数7〜8枚に達しているというアロハ好きです。
Hさんがいま住んでいるのは佐久市の山間の小さな集落。古い民家に一人で暮らすHさんは夜になると「寂寥感がものすごくて」、寝るときも灯りはつけっぱなし、テレビも音量はしぼるもののつけっぱなしだといいます。「そうでもしなければ、さみしくて寝られない」というのです。
で、ここからが本題なのですが、Hさん、あるときこう言ったのです。
「一晩中テレビをつけててわかったことがあるんだけど、朝になると、テレビのボリュームって小さくなるのね」
「えーっ、ホントっすか?」
旧ブログによると「『え』に濁点をつけたいくらいわたしはおどろいた」と書いています。そして、「CMになるととたんにボリュームが大きくなるのはだれだって知っている。でも朝、ボリュームが小さくなるなんて初耳だ」と。
「 朝目が覚めて、ふとんのなかで聞いてると、小さくなっているのがよくわかるの」
そしてHさんはたたみかけるようにこう言いました。
「朝、ボリュームが小さくなるのは、みんなが使うからだと思うんだよね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。みんなが使うからって、朝、夕の炊事の時間に水道の出がわるくなるみたいに、テレビのボリュームも朝、みんなが使うから小さくなるっていうんですか?」
「うん、そういうことなんだと思うよ」
みんなが使うから朝はテレビのボリュームが小さくなるなんて、もしホントならちょっと驚く話でしょ?
それがホントかどうかは電力会社か家電メーカーに電話で聞けばすぐに教えてくれるんでしょうけれど、わたくし、この件をずっとそのままにしていました。もしHさんの言うことが本当で、電気も水道のように常に一定の量が供給されるのではないとしたら、それはそれで面白い話ではないかと思ったからです。もちろん、いつかはこの問題に決着をつけなくちゃという気持ちも頭の片隅にありましたけど。
そんなとき、手にした『ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか』(後藤雅洋著・河出書房新社)で偶然こんな記述を見つけました。「オーディオの極意」という小見出しに続く一文で、ちょっと長くなるけど引用しますね。
「オーディオ趣味は魔物だ。ジャズも魔物的なところがあるけれど、オーディオはより業が深い。門外漢からみればまるでオカルトかもしれないが、ホンのちょっとしたことで音がかわってしまうから始末が悪い。コンセントの挿し方を左右入れかえると音が変わるし、深夜になると音が変わる。もちろん根拠はあって、家庭用電源は片側だけに電流がきており、もう一方はアースなのだ。挿し込み方を変えればオーディオ機器内部のアース位置が変わり、音も変わる。夜間オフィスが閉まればコンピューター使用も少なくなり、電線を通じてアンプに侵入してくるデジタル・ノイズが減るので音が良くなる」
ボリュームが大きくなったり小さくなるとは書いてないですけど、電気は常に一定ではないということが書いてあります。Hさんの言うことは、本当だったんですよ! このあとは電気の話ではないのですが、興味深い話なので続けて引用します。
「(中略)こんな塩梅だから、ジャズ喫茶はどこの店にも“秘密”のオーディオ・テクニックというのがある。門前仲町の名店『タカノ』は、店内脇の階段に雑誌が雑然と積み上げられていた。オーディオでも大先輩に当たる亡くなった『ファンキー』の野口伊織さんによると、この雑誌の積み上げ方で音を調節しているのだという。そんなバカな、と当時は思ったが、いまは違う。わが店のスピーカーが埋め込んである壁の内側は空洞で、そこにCDや古い伝票の束などが収納してあるのだが、あるときそれを整理したら、途端に低音の出方がまったく変わってしまったのだ」
いやあ、音ってデリケートなんスね。雑誌の積み上げ方で音が違うと書いてありますが、雑誌によっても音が違ったりなんかして。「週刊文春」より「週刊新潮」のほうが音が皮肉っぽいとかって(皮肉な音ってどんな音だ?)
そんなわけでHさんの発見は一般人はなかなか気がつかないスゴい発見だったというお話でした。
ここ数日でカラマツが一気に芽吹き、山の色が変わってきました。奥の三角の山はおなじみ茂来山(1718m)。
テニスボールが大好きな近所の犬ジョン。
なだらかな山がふたつの重なっていますが、左から三ツ岳(2360m)と大岳(2382m)。二つの山に見守られながら太陽がゆっくりと沈んでいきます。
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by ekimaeshokudo
| 2010-05-07 02:21